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グラフでわかる3弦の特殊性【ギタリストのための音の科学 13】

3弦の話【ギタリストのための音の科学 03】クラシックギターの3弦の特殊性について書きました。一般にクラシックギターの3弦はボソボソと響きが悪く、それに満足していないギタリストは少なくありません。

その対策として、いわゆる「カーボン弦」という種類の弦が各メーカーから発売されています。通常のナイロン弦とカーボン弦の違いは、後者の方が素材の密度が大きく、その結果、細い弦になっていて、それによってある程度ボソボソを解消することに成功しています。

というような事を3弦の話【ギタリストのための音の科学 03】に書いたのですが、実音での検証はしていませんでしたので、実際に3弦の音がどういう音なのか、測定してグラフ化してみました。

測定環境は以下の通りです。

 1 - 3弦 : SAVAREZ Alliance
 4 - 6弦 : SAVAREZ Corum
 比較用3弦 : AUGUSTINE Blue

3弦の特徴を見るために以下の2つの組み合わせで、実音を鳴らして測定しました。全ての弦を正しくチューニングした状態で、弾く弦以外は消音して、親指のアポヤンド(爪は当てずに)で弾いた音を録音しました。

  • 3弦の開放と4弦5フレットの音を比較
  • 3弦の4フレットと2弦の開放の音を比較

なお、SAVAREZ Alliance(私が常用している弦です)はいわゆるカーボン弦なので、普通のナイロン弦としてAUGUSTINE Blueの3弦も使いました。また、私のギターである小林一三 No.50については、色々なギターを弾き比べて、3弦のボソボソ度が最も小さいと感じられたのがこの小林一三 No.50である、という点も付け加えておきます。

では早速、上記の比較のグラフを見てみましょう。

○ 4弦5フレットと3弦開放の音を比較(G = 196Hz)
1-a. SAVAREZ Corum 4弦5フレット(音の強さ)

f:id:nose-akira:20190303143433j:plain
1-b. SAVAREZ Corum 4弦5フレット(音の周波数成分)
f:id:nose-akira:20190303143554j:plain
2-a. SAVAREZ Alliance 3弦開放(音の強さ)
f:id:nose-akira:20190303143656j:plain
2-b. SAVAREZ Alliance 3弦開放(音の周波数成分)
f:id:nose-akira:20190303143738j:plain
3-a. AUGUSTINE Blue 3弦開放(音の強さ)
f:id:nose-akira:20190303143813j:plain
3-b. AUGUSTINE Blue 3弦開放(音の周波数成分)
f:id:nose-akira:20190303143850j:plain

○ 2弦開放と3弦4フレットの音を比較(B = 247Hz)
4-a. SAVAREZ Alliance 2弦開放(音の強さ)

f:id:nose-akira:20190303143932j:plain
4-b. SAVAREZ Alliance 2弦開放(音の周波数成分)
f:id:nose-akira:20190303144017j:plain
5-a. SAVAREZ Alliance 3弦4フレット(音の強さ)
f:id:nose-akira:20190303144049j:plain
5-b. SAVAREZ Alliance 3弦4フレット(音の周波数成分)
f:id:nose-akira:20190303144123j:plain
6-a. AUGUSTINE Blue 3弦4フレット(音の強さ)
f:id:nose-akira:20190303144201j:plain
6-b. AUGUSTINE Blue 3弦4フレット(音の周波数成分)
f:id:nose-akira:20190303144232j:plain

以上のグラフを見比べると以下のことがわかります。なお、音の強さのグラフで濃い青は最大値、薄い青は平均値を示します。

2弦または4弦との比較 音の強さ 音の周波数成分
SAVAREZ Alliance 3弦(カーボン弦) 音の減衰傾向に顕著な差は見られない 4,000Hzから10,000Hzあたりの倍音成分が少ない
AUGUSTINE Blue 3弦(ナイロン弦) 平均値の減衰に差は見られないが、最大値の減衰がやや早い(?) 上記成分がさらに少ない

音の強さに関する考察は微妙なところですが、周波数成分については、明らかに3弦は高音成分が少ないと言えそうです。

私の知る限りにおいて、3弦のボソボソ音について何らかの実験・測定結果から説明したWeb記事などは見たことがありません。上記測定は科学実験としては色々とお粗末ではありますが、それでも3弦のボソボソ音について、その正体に具体的な提言が出来たり、カーボン弦の効果を可視化したりといった意義はあるのではないかと思います。

弦メーカーさんはこういう測定をしていると思うのですが、そのデータを公開してくれると非常に興味深いと思います。