科学と技術を雑学的に気まぐれに語るブログ 

科学と技術に関係したエッセイのようなもの

2019-01-01から1年間の記事一覧

サイレントギターの1弦問題(後編)【ギタリストのための音の科学 22】

前回の「サイレントギターの1弦問題(前編)【ギタリストのための音の科学 21】」の続きです。 nose-akira.hatenablog.com サイレントギターの1弦の音量が極端に小さいという問題。どうしてそうなるのか、全然わからなかったのですが、サイレントギターのピ…

サイレントギターの1弦問題(前編)【ギタリストのための音の科学 21】

私は普通のクラシックギターの他にヤマハのサイレントギターも使っています。jp.yamaha.com上記のモデルは最新のやつですが、私が持っているのは10年位前のモデル。でも、基本構造は同じです。ちなみに、サイレントギターは金属弦のタイプ(アコースティック…

東京大学の光量子コンピューター

先日(2019年10月18日)、東京大学大学院工学系研究科が光量子コンピューターについての発表を行いましたので、その内容について簡単な解説を行いたいと思います。もちろん、学術的にはほんのさわり程度しか理解できていませんので、あれこれと不十分な点は…

IBMの53-Qubit量子コンピューター

先日、IBMが53-Qubit(53量子ビット)の量子コンピューターを発表しました。japan.cnet.com記事を読んでもわかりにくいかもしれませんが、翻訳のせいではなく、元の英語の記事も似たようなものでした。IBMのプレスリリースも貼っておきましょう。newsroom.ib…

「ムーアの法則」の量子コンピューター版は「ネーヴンの法則」?

コンピューターの性能向上に関する指標として有名なムーアの法則という、経験則というか予測というか、そういうモノがあります。 ja.wikipedia.org 「ムーアの法則はもう限界だ」的な事が言われ始めてから、多分10年以上経っていると思いますが、8コアだ28コ…

雑誌「現代ギター」の「ギターの音の遠達性」記事について(下)【ギタリストのための音の科学 20】

前回は、雑誌「現代ギター 2018年10月号」の「ギターの音の遠達性」記事の前半パートについて所感を述べました。 今回はその続きで、記事の後半パートについて。 後半パートは日本を代表するクラシックギタリストの福田進一さんへのインタビューで、ギタリス…

雑誌「現代ギター」の「ギターの音の遠達性」記事について(上)【ギタリストのための音の科学 19】

先日このブログでギターの音の遠達性について書きました。 nose-akira.hatenablog.com この記事を書いている途中で気づいたのですが、雑誌「現代ギター」の2018年10月号で「ギターの音の遠達性」という特集がされていたのでした。以前は「現代ギター」誌を毎…

純正律和音と平均律和音の違いを「公倍音」で見る【ギタリストのための音の科学 18】

「波形グラフで見る和音の響き」では、純正律と平均律の和音の違いを音波の波形で比べてみました。今回は別のアプローチで和音を可視化してみたいと思います。既に何回もこのブログで取り上げたように、ギターやそのほかの楽器の音は、特定周波数の基音と各…

量子アニーリング方式の限界? NUMAがSMPにはなれない話に近いような…

本日、ITmediaに以下のような記事が載りました。 www.itmedia.co.jp 要するに量子アニーリング方式の量子コンピューターにはもう将来はない、という趣旨の内容です。 具体的に誰がどうと言わずに「海外は〜〜」というのは何やら出羽守っぽいのですが、主張の…

新しい弦と古い弦の音の違いをグラフで見る【ギタリストのための音の科学 17】

クラシックギターに限らず、ギターの弦を新しいものに交換すると気分が良いものです。新しい弦に特有の、明るいというか、輝かしいというか、シャリンとしたというか、そういう音がします。逆に言うと、張ってからしばらく(数週間〜数ヶ月?)経った弦は、…

「遠達性」の謎に迫る(下)【ギタリストのための音の科学 16】

前回の『「遠達性」の謎に迫る(上)』の続きです。まだ読んでない方はそちらから先にお願いします。いわゆる「遠達性」について、音の質が影響しているという可能性を考えていて、私は「これこれこういう音は遠達性が高い」という仮説を持っていました。た…

「遠達性」の謎に迫る(上)【ギタリストのための音の科学 15】

「遠達性」という言葉があります。多くはクラシックギターの特徴として、「遠達性がある」とか「遠達性が低い」などと使われます。他の楽器でも使われることがあるのかもしれませんが、Google検索の結果では、ほとんどがクラシックギターに関しての言及です…

D-WAVEのクラウド「Leap」、日本でも利用が可能に

先日、D-WAVE Systemが量子コンピューター「D-WAVE 2000Q」にアクセスできるクラウドサービス「Leap」を発表しました。約17億円の量子コンピューターをクラウドで貸し出すD-WAVEの「Leap」、ついに日本でも正式公開jp.techcrunch.comD-WAVEの量子コンピュー…

アルアイレとアポヤンド、そしてパコ・デ・ルシアの音【ギタリストのための音の科学 14】

クラシックギター教則本の最初の方に必ず書いてある、アルアイレ奏法とアポヤンド奏法。アルアイレは弦をはじいた指が隣の弦に触れない奏法で、アポヤンドは弦をはじいた指を隣の弦に触れて止める奏法です。技術的な違いはどの教則本にも書かれていますが、…

グラフでわかる3弦の特殊性【ギタリストのための音の科学 13】

3弦の話【ギタリストのための音の科学 03】でクラシックギターの3弦の特殊性について書きました。一般にクラシックギターの3弦はボソボソと響きが悪く、それに満足していないギタリストは少なくありません。その対策として、いわゆる「カーボン弦」という種…

量子ビットにおける0と1の重ね合わせ

「量子ビットとシュレディンガーの猫」で、量子ビットの特徴は「0か1か」ではなく「0と1の重ね合わせ」の状態である、という話をしました。今回は「0と1の重ね合わせ」について、もう少し詳しく見ていきましょう。古典ビット、すなわち数字の0と1では、(加…

「IBM Q System One」の発表について(アナリスト風に)

2019/1/8にIBMから量子コンピューター「IBM Q System One」が発表されました。 www.itmedia.co.jp 今日はこの発表について所感を述べたいと思います。 この記事には「世界初の商用統合ユニバーサル近似量子計算システム」という表現が使われていて、「ユニバ…

量子ビットの表現方法 ― ディラック先生ありがとう

前回は量子ビットについて、 量子ビットは 0 と 1 の重ね合わせの状態にある この重ね合わせによりデータの並列化が実現され、それが量子コンピューターの速さの理由である という説明をしました。「0 と 1 の重ね合わせの状態」についてしばしば誤解される…